
AWSの主要なブロックストレージサービスである Amazon EBS(Elastic Block Store)。システム要件に応じて適切なEBSタイプを選ぶことは、性能・可用性・コストの最適化に直結します。
本記事では、EBSの全6種類のボリュームタイプについて、SSDとHDDの違いから各タイプの特徴、実務の選定フロー、構成例の考え方まで、インフラ設計を担当するエンジニアやIT推進部門の方向けにまとめます。
前提知識:SSDとHDDの決定的な違い
EBSのボリュームタイプは、大きくSSD系とHDD系の2つに分類されます。物理的特性と得意なアクセスパターンを理解することが、適切なストレージ選定の第一歩です。
SSD(Solid State Drive)の特徴
重要指標は IOPS(Input/Output Operations Per Second) です。
得意なのはランダムI/O、小規模な読み書きが頻発する環境です。メモリチップにデータを記録するため、応答遅延が非常に短く、RDBMSのトランザクション処理やOSのブートボリュームなど、リアルタイムな応答性が求められるシステムに向きます。
HDD(Hard Disk Drive)の特徴
重要指標は スループット(MiB/s) です。
得意なのはシーケンシャルI/O、大規模データの連続読み書きです。ランダムアクセスは苦手な反面、大容量を連続処理する際のコストパフォーマンスに優れます。ビッグデータ解析、ログ処理、データウェアハウス(DWH)などに適しています。
EBS ボリュームタイプ全6種の特徴とFinOpsの観点
EBSには、パフォーマンスとコストのバランスが異なる6つのボリュームタイプがあります。
| ボリュームタイプ | 分類 | 主な用途 | ブートボリューム |
|---|---|---|---|
| gp3 | 汎用SSD | Web/アプリ、小中規模DB(標準選択) | 可 |
| gp2 | 汎用SSD(旧) | レガシー環境 | 可 |
| io2 / io2 Block Express | プロビジョンドIOPS SSD | ミッションクリティカルDB | 可 |
| io1 | プロビジョンドIOPS SSD(旧) | レガシー高IOPS環境 | 可 |
| st1 | スループット最適化HDD | DWH、大規模ログ、シーケンシャル処理 | 不可 |
| sc1 | コールドHDD | アーカイブ、低頻度バックアップ | 不可 |
汎用SSD(General Purpose SSD)
最も標準的で、幅広いワークロードに対応できるバランス型のボリュームです。
gp3(現在の基本選択肢)は、容量とパフォーマンス(IOPS、スループット)を完全に独立して設定できます。ベースラインで3,000 IOPS / 125 MiB/sが標準提供され、柔軟なサイジングが可能です。
gp2(旧世代)は、ボリュームサイズに比例してIOPSが決まる仕組みです。新規構築でgp2を採用するケースは少なく、AWS公式でもgp3への移行が推奨されています。同等以上の性能をより低コスト(最大20%減)で利用できるため、既存のgp2環境は無停止でのgp3移行によるコスト削減を検討する価値があります。
プロビジョンドIOPS SSD(Provisioned IOPS SSD)
最高峰のパフォーマンスと耐久性を求める、ミッションクリティカルなシステム向けです。
io2 / io2 Block Express は、耐久性99.999%と高いIOPS/GB比率が特徴です。Block Expressでは最大256,000 IOPS、4,000 MiB/sのスループットを達成可能で、大規模RDBMSではio2が第一選択となります。
io1(旧世代)は高い耐久性とIOPS性能を提供しますが、同価格帯でより高耐久・高性能なio2が提供されているため、新規採用のメリットは薄くなっています。
スループット最適化HDD(Throughput Optimized HDD)
st1 は、ビッグデータ、DWH、大規模ログ処理などのシーケンシャルワークロード向けです。低コストで高いスループットを発揮します。システムブートボリュームとしては使用できません。
コールドHDD(Cold HDD)
sc1 は、長期アーカイブやバックアップなど、普段はほとんどアクセスしないデータ向けです。EBSの中で最も料金が安価です。システムブートボリュームとしては使用できません。
EBS選定フローチャート
要件定義の際、どのEBSタイプを採用すべきかを判断するためのフローです。
Yes → SSD系
超高性能DB?
No → HDD系
(DWH・ログ)
(アーカイブ)
※ st1 / sc1 はブートボリューム不可
ユースケース別の構成例
設計のたたき台として、次のような割り当てがよく使われます。
EC2のルートボリューム(OS起動)は gp3 が無難です。本番RDBMSをEC2上で運用する場合、SLAとIOPS要件次第で gp3 から io2 へ段階的に引き上げます。ログ集約サーバーのデータ領域には st1、長期保管用のスナップショット退避先には sc1 といった組み合わせが典型的です。
まとめ
EBS選定は、SSD(IOPS重視)とHDD(スループット重視)の違いを押さえたうえで、gp3・io2・st1・sc1 など6タイプから要件に合わせて選ぶことが重要です。FinOpsの観点では、残存gp2のgp3移行も見逃せないコスト施策です。
設計時は比較表と選定フローをチームで共有し、ブート可否やIOPS要件を要件定義書に明記しておくと、後工程の手戻りを減らせます。
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