日々の業務改善に欠かせないツール、kintone。情報の属人化を防ぎ、チーム全体でスムーズにデータや進捗を共有できる非常に優れたプラットフォームです。しかし、日々システム開発や現場のサポートに携わる中で、私たちはあるひとつの「もどかしさ」に気がつきました。
それは、「全体共有には最適化されているが、個人単位の『ちょっとした思考の整理』には向いていない」という事実です。
「わざわざチーム全員に通知を飛ばすほどのことではないけれど、自分だけは把握しておきたい」
「商談前や対応中の、まだまとまりきっていない備忘録を手元に置いておきたい」
このような「個人のメモ書き」は、システム化が進むほど置き場がなくなってしまいがちです。そんな現場のリアルな課題を解決するために、私たちはkintoneに自分専用のメモ領域を追加する拡張プラグイン「MYMEMO(マイメモ)」を開発しました。

本記事では、なぜkintoneで個人用メモを残すのが意外と難しいのかという構造的な理由と、kintoneアプリに自分だけのメモが作れるプラグイン「MYMEMO」をご紹介します。
なぜkintoneで「ちょっとしたメモ」を残すのは難しいのか?

kintoneは、強力なデータベースとコミュニケーション機能を備えた素晴らしいツールです。しかし、いざ「自分だけの備忘録」を残そうとすると、標準機能だけでは解決しづらい2つの壁にぶつかります。
理由1:コメント欄の「通知」と「全体公開」
kintoneのレコードには便利なコメント機能がありますが、これはあくまで「チーム間のコミュニケーション」を前提としています。
コメントを書き込むと、レコードの作成者や担当者に通知が飛んでしまいます。「後でもう一度確認する」「次回の商談でAの件を深掘りする」といった自分宛てのちょっとしたメモ書きでいちいち通知を飛ばすのは、他のメンバーにとってノイズ(通知過多)になりかねません。また、内容は全員に見えてしまうため、体裁を気にせず気軽に書き込むことが心理的に難しくなります。
理由2:個人用フィールド追加の壁(管理者権限)
「ならば、アプリに『自分用メモ』という文字列フィールドを追加すればいいのでは?」と考えるかもしれません。しかし、ここにも運用上の大きな壁があります。
kintoneのフォーム(レイアウト)を変更するには、アプリの管理者権限が必要です。現場の一般ユーザーが、自分のためだけに勝手にフィールドを追加することはできません。かといって、IT管理者に「自分用のメモ欄を作ってください」と依頼するのも気が引けますし、ユーザーごとに個別のメモ欄を作っていては、アプリの構造がすぐにカオスになってしまいます。
「誰にも通知を飛ばさず、自分だけが見られるメモを、今のアプリのまま残したい」
実は、kintoneの標準仕様でこれを実現するのは、構造的に非常に困難なのです。
現場から聞こえてきた、こんな「モヤモヤ」
私たちがシステム開発や日々のサポートを通じて耳にしてきたのは、kintoneを全社導入し、情報共有が進んでいるからこそ生じる現場の細やかな「モヤモヤ」でした。具体的には、以下のようなシチュエーションで「個人用メモ」のニーズが強く存在しています。
💼 商談の「空気感」や未確定な情報を残したい営業担当者
「次回の商談で必ず触れるべきポイントや、お客様がポロっとこぼした懸念点をメモしておきたい。でも、まだチームの正式な活動履歴として残す段階ではないし、コメント欄に書いて上司やチームメンバーに通知が飛ぶのも大げさすぎる…」
結局、手元のノートや自分宛てのチャットツールにメモを残してしまい、kintoneと情報が分散してしまうケースが多発していました。
👥 他者の評価に引っ張られずに記録したい採用担当者
「面接直後の率直な第一印象を、忘れないうちに書き留めたい。しかし、kintone上にそのまま書くと他の面接官の目に入り、評価にバイアス(偏り)を与えてしまう可能性がある…」
面接官それぞれが独立して所感を記録し、後からすり合わせることで公平な評価に繋がりますが、標準機能ではその「自分だけの控え室」がありません。
📋 先輩からの教えを整理したい新任担当者
「顧客対応時の細かな注意点や、まだ自分が完全に理解できていないポイントを、その対象レコードに紐づけてメモしておきたい。でも、自分個人の復習用メモを、共有スペースに書き込むのは気が引ける…」
共通しているのは、「まだ正式なデータ(レコード)にしたくない、未完成でパーソナルな情報」の置き場がない、という切実な悩みでした。
開発のこだわり:既存アプリを「一切汚さない」仕組みづくり

現場の「自分用メモが欲しい」という声に応えるため、私たちが最もこだわったのは「既存のkintoneアプリのフォームやレイアウトを一切変更しない(汚さない)」ことでした。一般ユーザーにフォーム変更権限がない問題や、管理者が都度フィールドを追加する手間をどうクリアするか。これが開発の最大のテーマでした。
そこで私たちが着目したのが、kintone標準の「ヘッダー表示領域」です。
MYMEMOプラグインを導入すると、レコードの詳細画面や一覧画面の上部に専用の「MyMemo」ボタンが追加されます。このボタンをクリックするだけで、画面上に個人用のメモパネルがスッと展開するUI(ユーザーインターフェース)を採用しました。これにより、アプリ本来の画面レイアウトに干渉することなく、必要な時だけパーソナルスペースを呼び出せるスマートな設計を実現しています。
さらに、メモしたデータ自体は対象のアプリのレコード内に保存されるわけではありません。裏側で自動生成される「MYMEMO専用アプリ」に紐づいて保存される仕組みになっています。ここにkintone標準の「レコードアクセス権」を掛け合わせることで、システム管理者であっても他のユーザーのメモは一切閲覧できない、「作成者本人のみ」という強固なセキュリティを構築しました。
もちろん、導入するシステム管理者様への配慮も忘れていません。この専用アプリの作成や、閲覧制限といった複雑なアクセス権の初期設定は、プラグインの設定画面から「全自動」で完了するように作り込みました。IT担当者の作業負荷を最小限に抑え、インストール後すぐに現場で活用できる手軽さを追求しています。
まとめ
kintoneは本来、「チーム全員での円滑な情報共有」に特化した素晴らしいプラットフォームです。その強みを最大限に活かしつつ、個人の作業効率や思考の整理をサポートする「あなただけのパーソナルスペース」をプラスするのが、今回開発した拡張プラグイン「MYMEMO」です。
わざわざ全体に共有するほどではない日々の気づきや、通知を飛ばしたくないちょっとした備忘録を、気兼ねなく残せる環境を整えることで、日々の業務ストレスは大きく軽減されます。しかも、既存のアプリ設定やレイアウトを変更することなく、導入後すぐに使い始めることが可能です。
「MYMEMO」の詳しい機能や使い方、導入・初期設定のマニュアルについては、以下の製品ページにて公開しております。kintoneの運用で「自分用のメモが書きづらい」と少しでもモヤモヤを感じている方は、ぜひ一度チェックしてみてください。